65回目の終戦記念日を、モルディブの小さな島で迎えた。
日本時間の正午にあたる午前8時。
ラマダン中は勤務時間が8時半から13時なので、まだ家に居る時間。
ひとりで黙祷をした。
「安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから」
これは、広島の平和記念公園にある、原爆死没者慰霊碑の石室に書いてある言葉。
いつか見に行って以来、ずっしりと重く、心に残る言葉だ。
(写真中央部が碑文)
この言葉に対しては、様々な論争があるらしい。
「主語はいったい誰なのか」と。
現在では、「広く人類全体」を主語とするということが公式見解になっているという(Wikipediaより)。
原爆を落としたアメリカ合衆国ではなく。
落とされた広島・長崎の人々でもなく。
あの恐ろしく悲しい出来事が、この地球上で二度と起こらないように、世界人類の誓いなのだと。
ヒロシマ・ナガサキについては、こっちでもよく知られている。
日本のことはよく知らないけれど、原爆については聞いたことがあるというのだ。
特に、インド人の先生たちは興味があるらしい。
私が3月に日本に帰国したときにも、社会科を教えるインド人の先生に、原爆について解説したDVDを買ってくるように頼まれた。
8月6日にも、9日にも、そして15日も、声を掛けてくれた。
「今日は広島の日だね」「長崎の日だね」「終戦の日だね」と。
1945年の8月15日は、インドがイギリスの植民地支配から独立した日でもあり、彼らにとっても重要な意味を持つのだという。
毎年12月に首都マーレで、「日本・モルディブフェスティバル」というイベントを開催している。
日本文化の紹介を通して、両国の交流や親睦を深めようというもの。
去年はよさこいソーランを踊ったり、環境やドラッグ問題をテーマにした劇(浦島太朗のパロディ)を上演したり、日本食・ゆかた・習字・日本の遊びなどの体験ブースを設置したりした。
そのイベントで、今年は「原爆展」を開催しようという案が出ている。
広島市は、被爆体験を次世代や国内外を伝えるため、資料の貸し出しに応じてくれるのだという。
他の国の隊員が、原爆展を開催したという話を以前に聞いた。
そこでも関心は高く、予想以上の反応があったという。
私は教科書やメディアを通した程度の知識しかない。
原爆について「知る」ために、広島にも長崎にも行ったけれども、「知っている」なんて軽々しくは言えない。
私に原爆展の開催なんてできるかなと、自信がなかった。
彼らの苦しみも何も知らないくせに、知ったようにはとても話せないって。
でも今回は、広島出身の隊員が、「開催したい」と声をあげてくれた。
それならば、私たちにもできるかもしれない。
日本人として。
地球市民として。
過ちを繰り返さないために、伝えるべきものがあるのだということ。
* * * * *
以下は、平成22年度の「平和への誓い」。
未来の世界の平和を担う、2人の小学校6年生の言葉である。
どうしたら争いがなくなるのでしょうか。
どうしたらみんなが笑顔になれるのでしょうか。
ヒロシマに生きるぼくたちの使命は、過去の悲劇から学んだことを、世界中の人々に伝えていくことです。
悲しい過去を変えることはできません。
しかし、過去を学び、強い願いをもって、一人一人が行動すれば、未来を平和に導くことができるはずです。
(広島市のホームページ http://www.city.hiroshima.lg.jp/ より一部抜粋)