ちきゅう



「時速100kmで帰って来て!」


仕事からの帰りに、いつもの駅で、いつものように電車を降りた。

そこで目に入ったのが、電車に乗ろうとベビーカーを押すお母さんと、その少し前を歩く男の子。
手もつながず子どもだけで歩いているのが、危なっかしいなと思って見ていた。

3歳くらいの男の子が、ひと足先に、私が降りたドアから電車に乗った。
そのあとすぐに、お母さんがひとつ後ろのドアから乗った。

ドアが閉まりかけたそのとき、自分のすぐ後ろにいると思っていたお母さんがいないことに気付いた男の子が、あわてて電車から降りてしまった!!!

お母さんがひとつ後ろのドアから乗ったので、姿が見えなくてあせってしまったみたい。
その男の子も私も、「えっ!?」と思っているうちに、無情にもドアは閉まり・・・

ゆっくりと加速する電車。
お母さんの顔が目の前を通り過ぎた。

「そこで待っていなさい」
お母さんは冷静な表情で、ゆっくりとそんなジャスチャーをした。

しかし彼は、パニックのあまり、そんなことには気付いていない。
火が点いたように泣き出した男の子の手を引っ張り、とりあえず電車から離す。

家に帰るだけの私は「一緒に待っていようね」とベンチに座ってお母さんを待つことにした。
次の駅で折り返して、すぐに戻って来てくれるだろう。

小学1年生の扱いなら慣れているんだけれども。
この若さはちょっと、未知の世界。

「次の駅で降りて戻ってくるよ」や「泣くと疲れるからやめよう」の理屈も通じない。
膝の上にのせてあやすも、「3・2・1」とカウントダウンするも、泣き声は大きくなる一方。

「お母さんに今すぐ戻ってきて欲しいんだもん!」
そうだよね、心配だよね、そりゃ泣いちゃうよね・・・

ホームの反対側に一本目の電車が到着した。これには時間的に乗れていないはず。
お母さんの姿はなく、さらに泣き続ける。

「名前はなんていうの?」「いやだー!」
もはやまったく会話にはならない。

二人で大騒ぎしていたそんなとき、小さな男の子からとびきりの名言が飛び出した。


「時速100kmで帰ってきて欲しい!!!」


今すぐにお母さんに会いたい気持ちがよく表れている、なんとも子どもらしい表現。
彼の知る「速い」の最上級が、「時速100km」なのよね。

そのうちに二本目の電車が到着し、その窓からお母さんの姿を確認した。
「ほら、お母さんだよ」と、その子の手をとって振らせる。

興奮状態の彼に、「ここで待っていよう」の話など通じるわけもなく、「手を放してーーー!!!」と、まるで私から逃げるように、走り出す男の子。

近くにあった階段を駆け下りる彼を、急いで追いかける私。どうか、転ばないで!
降り切ったところで目に入った同じホームに上がる階段を昇ろうとするので、「ちがーう!」と叫ぶ。

足がピタッと止まった。
おっ、指示が通るじゃないか。

手を取って反対側のホームに上がる階段へ。
そこに待ち焦がれたお母さんとベビーカーが、エレベーターで現れた。


よかったねえ。

これから電車に乗るときは、お母さんと手をつないでいてね。
君がもう少し大きくなるまでは。

あ、時速100kmの話、お母さんに伝えるの忘れちゃったよ・・・
おもしろいエピソードだったのになあ。

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眠活継続中で、明かりは間接照明を点けている。
あたたかい柔らかい光で、いつものカーテンがきれいに見えるな。
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by skr201 | 2011-11-24 21:06
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